文横だより2024年 10月号

図らずも20年程前に行ったことがあった北海道の木田金次郎美術館を振り返る機会を得た。
今回の読書会で有島武郎『生まれ出づる悩み』が取り上げられた為である。
木田は主要登場人物木本の実在モデルで、画家になる夢を持ちながら漁師をしていた。
そして有島の影響で後に故郷岩内の画家と呼ばれるまでに至った。
約20年振りに写真で見た木田の作品の筆致は、繊細さと豪放さを合わせもっていた。
同時に木田が、良くも悪くも追われるように一心不乱に描いていたことも読み取れた。
61歳の時に岩内大火(1954)に遭ったことと無縁ではないだろう。
それまでの作品1500点余りが焼失してしまった。
幾年もの時を経て絵を再見すると、別な発見が得られることを再認識することとなった。
それは読書とも類似する。
その他にも、有島の長男が往年の名優森雅之であることを改めて掘り下げる機会ともなった。
森は木下『破れ太鼓』、黒澤『羅生門』、溝口『雨月物語』、成瀬『浮雲』、市川『こころ』等々の
多くの巨匠監督の名作の中で、人間の両義性、多面性といった複雑な役所を見事に演じ分けている。
森の演技は、理想と現実の狭間にいた作中の木本や有島自身の持っていた苦悩とどこかオーバーラップしてくる。
読書会では、一つのテーマから派生して次々と別なテーマが浮かび上がる。そこがまた面白い。
 
     ★
 
文横だより2024年 10月号をお送り致します。
会長の金田さんは現在長期療養中です。
引き続き私、篠田が代行して文横だよりをお送りさせて頂きます。
 
◆10月読書会
  日 時: 10月5日(土)17時~19時
  場 所:神奈川県民センター内、会議室
  テーマ:『生まれ出づる悩み』有島武郎 新潮文庫等)
  担当者:阿王さん
  出席者:(リアル)(敬称略)
  鶴見、河野、清水、篠田、佐藤直、中根、林、森山、阿王、
  藤原、寺村、野田、中川、岡井、山口  (見学者)小鍛冶
 
  「掲示板」からの参加(敬称略)10/5現在
  阿王、清水、寺村、藤原、成合、野田、中川、岡井
 
 以下、読書会担当者より(抜粋)
 
 【課題作品を選んだ理由について】
  ・・・本作、有島武郎の『生れ出づる悩み』は、私が小学生の時に習っていた
  「公文式」の国語の問題で扱われていて、興味を感じ、図書館で借りて読み、
  感動した作品であった。
  あれから三十年経ってしまったが、久方ぶりに読んで、小学生の頃に読んだ
  時よりもはっきりとした感動を感じた。
 【読解のポイント】
  「私」と「君」の共通点はどこだろうか
   →芸術に純粋であるところ
  「私」と「君」の違いはどこだろうか
   →裕福な生活に困らない作家の私(有島武郎)と生活に困り漁村で生活しながら
   絵画を描く芸術家になりたいともがいている君(木田金次郎※木本君)
   ブルジョアジーとプロレタリアート
  ・・・(以下省略)
 
  ※全文は『掲示板』に掲載されています。また後日ウェブにも掲載される予定です。
 
◆文学散歩
  日 時: 10月 6日(日)
  場 所:横浜の山手の丘周辺各地
  テーマ:上記場所が登場する複数の文豪作品のその縁の地を訪ねます。
       吉村昭『生麦事件』、三島由紀夫『午後の曳航』、有島武郎『一房の葡萄』、
       中里恒子&川端康成『乙女の港』、中島敦『山月記』、その他谷崎潤一郎の旧家など。
  担当者:藤野さん
  参加者:(敬称略)藤野、清水、中川、佐藤直、江頭、森山
 
  ※『文学横浜の会』グループラインに参加者のコメントが掲載されております。
 
◆11月の読書会スケジュール
  日 時:11月 2日(土)17時~19時
  場 所:神奈川県民センター内、会議室
  テーマ:『ハンチバック』市川沙央 文藝春秋社
     文庫本では出ていません。AMAZONにて廉価本有り。
     2023年度芥川賞作品、「文藝春秋」9月号に掲載。
  担当者:成合(日向)さん
  【掲示板へ感想書き込みのご協力のお願い】 
  担当者のご都合で、掲示板へ感想書き込みのご協力を宜しくお願い致します。
 
◆その他
(1)12月の読書会スケジュール
      日 時: 12月 7日(土)17時〜19時
  場 所: 神奈川県民センター内、会議室
  テーマ: 『みちのくの人形たち』 深沢七郎 (中央公論社)
    担当者: 森山さん
                    担当者より、「Amazon、楽天等でも廉価本がでているようです」
 
(2)1月以降の読書会スケジュール
       1月以降の担当者順は、
      (敬称略)山下、鶴見、藤本、原、清水、河野、藤原、寺村、野田、金田、中川、
    高木、岡井、山口(山岡)、福島、中根、篠田、杉田、林、阿王
        の順となります。
        担当者はテーマが決まりましたら篠田までご連絡をお願い致します。
    注)辞退、順番の変更等がありましたら、ご連絡をお願い致します。調整致します。
      また漏れや今まで辞退していたが担当ご希望の方がありましたら、ご連絡をお願い致します。
    注)担当者は原則リアルにもご出席をお願い致します。
     
(3)『文学横浜』第57号の合評会及び総会の開催日が決定
  日 程: 2005年4月6日(日) ※時間は未定ですが、午前、午後両方の予定です。
  場 所: 神奈川県民センター内、会議室
 
以上、篠田

蔓(かずら)橋(2022年10月、祖谷渓、中川撮影)
2024/10/10